2022年2月2日水曜日

三つの価値領域;発見され実現されるのを待っている「意味」を探す指標

 ・「私は,この人生で,今,何をすることを求められているのか」

・「私のことをほんとうに必要としている人は誰か。その人は,どこにいるのか」

・「その誰かや何かのために,私にできることには,何があるのか」


①創造価値

何かを行うことによって,つまり活動し創造することによって実現される価値のこと。その人になされるのを待っている仕事,その人に創造されるのを待っている芸術作品などが創造価値の実現につながる。フランクルの場合は自分の処女作(「医師による魂の癒し」)を出版し学説を世に問うことが「創造価値」となり,生きる意欲の源泉となった。

*「ただの洋服屋に人生の意味なんてない」という反論に対し,フランクルは職業がどうこうではなく,自分の与えられた仕事にどれだけ最善を尽くしているかということだけが大事であると述べている。これは内村鑑三が「後世への最大遺物」の中で,「人間が後世に遺すことのできる最大の遺物は,勇ましく高尚なる生涯である。後世の人にこれぞと覚えられるものは何もなくとも,あの人はこの世に生きている間は真面目なる生涯を送った人であると言われるだけのことを後世の人に遺したいと思う」と述べたことに類似する。

 

②体験価値

何かを体験することによって実現される価値のこと。自然の体験,芸術の体験,人を愛する体験,人に奉仕する体験など,世界から何かを受け取ることによって実現される価値。美しい夕日を見て,アルプスの頂上から景観を眺めて,コンサートを聴いて,など,その瞬間,誰かが「人生に意味はあるのか?」と尋ねたら,その時の答えはただ一つ「この瞬間のためにだけ生まれてきたのだとしても,それでも私はかまいません」,その答えしかあり得ないとフランクルは言う。この「体験価値」は様々な体験を含む幅の広い概念だが,特に「人と人とのつながり」の体験が特にキーポイントである。例えば,ボランティアも体験価値がベースである。「自分を必要としてくれる人がいる」,「自分も役に立てる」などの意識がボランティアをする人自身の心を充実させ,生きる意欲の源泉となる。収容所仲間で「外国でたった一人の妹が自分の生還を信じて待っている」と考えたことが大きな生きる意欲につながった人がいたという。不登校の生徒が,クラスの亀の飼育係になった途端,毎日休むことなく,学校に登校するようになった例。「自分がえさをあげないと亀が死んでしまう。亀は私を必要としてくれている」という意識が,登校意欲をかき立てたということである。

 

③態度価値

自分自身ではどうしようもない状況,変えることのできない運命に直面した時,その窮状に対してとる態度によって実現される価値のこと。「この態度価値が存在することが,人生が意味を持つことを決してやめない理由である」とフランクルは言う。「創造価値と体験価値の両方を奪われてしまった人でも,態度価値だけは奪われることはない」とも言う。

重い病に冒された人が,死の間際に「激痛であなたを呼び出し,安眠を奪わないように,今のうちにモルヒネ注射を済ませておいてください」と言った。人生の最後の数時間さえ,周りの人を思いやる気持ち,ここにその人の人生の素晴らしい業績がある。ナチス収容所内にも,周りの人への思いやりの気持ちを最後まで失わない人が多くいた。こうした例から感じ取れることは何か。それは,人生には,まさに死の瞬間まで意味があるということ。息を引き取るその瞬間まで,その人によって「なされるべきこと」「実現されるべき意味」はなくなることがないということ。ついに人生が終わるその時まで,「意味」は絶えず送り届けられていて,その人に発見されるのを「待っている」のだということである。

0 件のコメント:

コメントを投稿